くせ毛に関する圧倒的な技術と知識を持つ「くせ毛・縮毛矯正の匠」と知られる「Lily」柳本剛さん

【柳本剛】面白さを感じたら海外進出にも挑戦!「美をもって世界を救う」

美容師として確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている業界トップの方々へのインタビュー。美容業界でのこれまでの仕事の取り組みや、未来についての展望、美容師さんたちへのメッセージをうかがいました。

【プロフィール】
柳本剛さん。都内のヘアサロン2店舗を経て、フリーランスの美容師として独立。髪質に悩む女性達から高い支持を集めている。2014年東京・表参道に「Lily」をオープン。くせ毛に関する圧倒的な技術と知識を持つ「くせ毛・縮毛矯正の匠」として知られ、サロンワークのみならずヘアケア・スキンケア商品の開発、パーソナルスタジオのプロデュースなど、女性の美に関する幅広い事業を手掛けている。
ブログ:https://beauty-architect.com/lily/blog/

当時付き合っていた彼女の影響で美容師の道へ

――美容師になられたきっかけをお聞かせください。

柳本:高校時代付き合っていた彼女が、美容師を目指していたのがきっかけです。ちょうど、その当時僕が通っていた美容室は夫婦2人で仲良く経営されていたところだったのですが、「なんだかいいなあ」と思っていたんです。彼女と一緒に美容師になれば、自分も将来同じように働けるかなと。最初は軽いノリでした。

どこの美容専門学校へ進むかは迷いましたが、東京で勤めていた叔父から「美容師なら、流行の発信地である東京が一番じゃない?」とアドバイスを受けたんです。どうせだったら一番のところに行きたいなと思い、東京の専門学校へ行くことに決めました。

――では、彼女と一緒に上京されたのですか?

柳本:それが結局、高校2年生の終わりくらいに彼女とは別れてしまったんです。ただ、一度美容師になると決めて公言してきた手前、急に進路を変えるのはちょっとかっこ悪いなと思いましたし、特にやりたいことがなかったなかで、美容師は「将来やってみてもいいかな」と思えることだったんです。だから、結果的には一人で東京の専門学校へ進みました。

――専門学生時代のことを教えてください。

柳本:とにかく楽しかったですね。最初は美容室でバイトをしようと思っていたのですが、友達に「美容師なんて就職後に嫌というほどできるのだから、学生のうちしかできないことをやったほうがいいよ」と、もっともらしいことを言われまして。そこで「確かに!」と思ったんです。友達と遊んだりヘアショーをやったり、自由気ままに過ごしていました。

――学生生活を満喫されていたのですね。大変なことはありましたか?

柳本:実は僕、すごく不器用なんです。手先も、人としても、不器用なので、美容師には向いていないと思います(笑)。例えば、技術の試験種目が何種類かあったのですが、そのうちの1つが全くできなくて。努力はしたものの1学期終了時のテスト結果は散々だったので、先生から「美容師以外の仕事のほうが向いているかも」くらいのことを言われたんです(笑)。

でも悔しいから、夏休みを利用して1日中ずっと練習しました。バイトをしていなかったので、時間だけはあるわけです。友達からの遊びの誘いは極力断って、ずーっと家で黙々と練習し続けました。
そうしたら、夏休み明けのテストで国家資格のタイム内にきっちり収められて、誰よりもうまくできたんです。ちゃんと努力すれば、僕でも一番になれるんだなって思いました。美容学校では、このような感覚を身につけられたと思っています。

――それだけの努力を続けられること自体、すごいことですね。

柳本:たぶん僕、好きなことしかやらないんです。興味がないことは一切やらないので、「勉強しろ」と言われるのはすごく嫌でした。「勉強して何の意味があるのだろう?」と思っていたので。
でも、美容師は自分がやりたいことだったし、悔しいから「見返したい!」という気持ちもありました。それが重なって努力できたのでしょう。やはり、好きでないと続けられないですよね。

練習時間が確保できず、もどかしさを感じたアシスタント時代

くせ毛に関する圧倒的な技術と知識を持つ「くせ毛・縮毛矯正の匠」と知られる「Lily」柳本剛さん

――専門学校卒業後、美容師として働き始めた頃のことを教えてください。

柳本:最初に入社したサロンにはアシスタントとして4年間勤めたのですが、厳しい環境でした(笑)。同期は、皆1年以内に辞めていきました。給与の低さは仕方ないと思っていたのですが、そのサロンには「サロンで練習禁止」というルールがありました。
営業中に先輩のカットを見て学ぶことと、そのサロンが開いていた美容師向けの塾に参加して講習を聞くことしかできなかったんです。頭では理解できても実践練習ができないので、常に「もっと練習したい」というもどかしい気持ちで一杯でした。

ほかの美容院で働いている同期の美容師は、技術的にも進歩して、お店にもお客様にも必要とされる立場にレベルアップしているのに、自分はシャンプーしかできず練習もできない。休日のモデルハントをはじめ、雑用に時間を割かれることが多くて、非常に歯がゆさを感じていました。

――そのような環境で4年間も勤められたのは、何がモチベーションになっていたんですか?

柳本:「うまくなりたい」という思いだけですね。そのサロンは、僕が専門学校に通っていた頃に一番うまいと思っていたサロンだったんです。技術だけは絶対に盗みたかった。ただ4年間勤めた時点で、自分なりにそのサロンの技術はある程度理解できたんです。
そこで、練習よりも雑用に時間を割かれてしまう環境から抜け出して、次のステップに進むタイミングかなと感じて、スパッと辞めました。

――次のサロンはすぐに見つかりましたか?

柳本:ちょうど最初のサロンを辞める少し前、違うサロンの先輩から「オープニングスタッフを募集しているサロンがある」という話を聞いていたので、その先輩に連絡をとってみました。面接を受けて、話が進みました。

――2つ目のサロンの職場環境を教えてください。

柳本:2つ目のサロンでも仕事自体はアシスタント業務を続けていたのですが、1つ目と真逆の環境だったんです。1つ目は技術を大事にしているサロンだったので、アシスタントは先輩美容師やサロンの売り上げについて何も知りませんでした。
一方、2つ目のサロンは、経営に重きをおいているサロンでした。誰がどれだけ売り上げているという金額がアシスタントにも全部オープンにされていたので、「売り上げがないとダメなんだ」という新たな視点を得られたんです。どちらも経験できて良かったなと思うのですが、自分にとっては2つ目のサロンでの経験が大きかったです。

実は1つ目のサロンに、技術が高くて接客も上手なのになかなか売れない先輩がいたんです。僕は「技術がうまければいつか売れるんだろうな」くらいに思っていて、あまり売り上げについて深く考えていませんでした。でも2つ目のサロンで働き始めてから、「どうやったら集客できるのかな」ということを真剣に考えるようになったんです。

――集客力をアップする方法は見つかりましたか?

柳本:そうですね。2つ目のサロンで良いヒントをもらえました。そのサロンは、すごく立地が良くて有名な美容師が作ったサロンでした。高額な広告宣伝費もかけていたのですが、お客様があまり来なかったんです。だから、アシスタントが街中で半額クーポンを配っていたんです。「売れる」ってこんなに難しいことなんだな、と現実を突きつけられたわけです。

半額クーポンで安売りするぶん、お客様の数をこなす必要が出てきますよね。でも、数をこなすとどうしても技術の質は落ちてしまう。
例えばカラーリングでは、一番きれいにカラーが入るベストな設定時間よりも大幅に時間短縮しなければいけません。カットにおいても、時間を省けば完璧な仕上がりを目指すことは難しい。一人のお客様にじっくり時間をかけられない、というのは数をこなすことの弊害なんです。

さらに、数をこなすということは、美容師一人がたくさんのお客様を同時に抱えるということです。自分だけでは回せないので、大勢のアシスタントに手伝ってもらう必要がある。すると、そのぶん人件費も取られるし、アシスタントは技術も接客もまだまだ勉強中の立場なので、いろいろと不具合が生じてくる、というのを理解していきました。

――数をこなすと売り上げは増えても、お客様の満足度という面では下がってしまうわけですね。

柳本:はい。美容師としてはお客様をできるだけ可愛く、そしてカッコ良くしたいのに、時間がないから十分な力を発揮できない。でも、そのほうが売り上げは増える、という矛盾です。そういった構造的な矛盾を自分なりに解決するために、マーケティングの勉強を始めました。

そこで初めて理解できたのが、「自分の価値」を売ることの大切さでした。高い技術力があり、良い接客ができるのに売り上げが伴わないのは、自分を売るマーケティングの力が足りていないのだと気づきました。

美容師として「自分の価値」を売るマーケティング

くせ毛に関する圧倒的な技術と知識を持つ「くせ毛・縮毛矯正の匠」と知られる「Lily」柳本剛さん

――「自分の価値」を売るマーケティングとはどういうことですか?

柳本:僕は、お客様に選んでもらう基準は「安い価格」ではなく、「自分の価値」であるべきだと思うんです。お客様に「この美容師さんでなければ施術は受けたくない」と思ってもらえるほど魅力あるサービスを提供できれば、その人の価値はプライスレスですよね。自分の価値を高めていけば、おのずとサービスの提供価格、つまり売り上げも増えるはずです。

価格面だけで勝負をすると、基本的には価格を下げたほうがお客様の数は増えます。ただ、僕はお客様の数を増やしたいのではなく、自分が納得できる仕上がりでお客様に満足してもらいたいんです。お客様の数を増やさずに、売り上げを増やすには、自分自身の価値を高めるしかないんです。なおかつ、自分の価値を人に知ってもらう必要があります。

そこで実際のマーケティング方法として実践してみたのが、まずはブログとFacebookを活用して自分の考えや熱意・想いを発信していくこと。それに共感した人が自分に会いに来てくれる、という流れを目指しました。

――柳本さんがフリーランスとして独立されたのは、ご自身のマーケティング方法を確立されたことがきっかけだったのですか?

柳本:そうですね。2つ目のサロンのマーケティング手法は、「安い価格」で勝負することでした。でも僕は、「安い価格」ではなく「自分の価値」でお客様から選んでもらいたいと考えていたので、サロンと僕の方向性にズレが生じてしまったのです。すでにブログ経由でちょこちょこお客様が来てくださっていましたし、自分が思うベストなマーケティング方法で勝負したいと思ったのでフリーランスとして独立しました。

――独立後、業務委託形式のサロンで働き出した頃のことを教えてください。

柳本:実は最初の3か月は、家賃も払えないくらいでした。そのぶん時間はたっぷりあったので、ずっとブログを書いていました。濃い内容のものを1日3記事あげることを自分に課していました。一応、街で声を掛ける集客方法も試してみたのですが、僕はアドリブが苦手なので自分には不向きだなと感じて。得意なことで勝負しようと思い、とにかくブログで集客を目指しました。

ブログの内容としては、自宅でおすすめのヘアケアなど髪質改善系の内容が多かったです。僕がブログで紹介したシャンプーを買ったよ、と言ってくださる方も結構いました。

――ブログでヘアケアや髪質改善について取り上げるようになったのは、何がきっかけだったのですか?

柳本:最初のきっかけは、2つ目のサロンでの経験です。トリートメントの施術をする機会が多かったのですが、「本当に髪をキレイにするのは、トリートメントではなく別の方法なのではないのか」と思い始めたんです。

というのも、どんなに高いトリートメント剤を使っても、再度来店された時にはキレイな髪状態ではなくなっていたんです。だから、トリートメントのような対処療法だけではなく、髪質を根本から改善していくための施術や自宅ケアが必要なのかなと、アシスタントながらずっと感じていたんです。

――現在柳本さんはクセ毛カットや縮毛矯正に特化されていますが、これはこの頃からですか?

柳本:そうですね。ブログを見て来店してくださった方に髪質改善の施術をしているうちに、クセ毛の方が結構多いことに気づいたんです。でも、髪質改善とは、元々の髪質を100%発揮させてキレイな髪にするもの。髪ダメージでクセ毛っぽくなっている方は髪質改善で徐々に落ち着いてきますが、そもそもクセ毛って髪の「形状」なので、髪質改善で元々の形状を変化させることやクセ毛を直すことはできないんです。

クセ毛を落ち着かせて楽にセットできる状態を目指すには、物理的にクセ毛を抑えないといけない。それならば、「クセ毛カットを極めよう」と。その時点からブログもクセ毛に関することを多く取り上げるようになり、クセ毛カットのビフォーアフター写真なども載せていました。そしたら、さらにたくさんのお客様が来てくださるようになりました。

そうしてクセ毛専門の美容師になると、今度はカットだけでは落ち着かせられない手ごわいクセ毛の方もいらっしゃるんです。カットで対応できないならば、科学的に髪の形状を変化させるしかない。それが縮毛矯正です。
僕は、昔から自分も縮毛矯正をかけてもらっていたことから、縮毛矯正には並々ならぬこだわりを持っていたんです。そのこだわりを自分の中で爆発させていきました。髪質改善・クセ毛カット・縮毛矯正、この3つがあればほとんどの方の髪を美しくできると考えてずっと特化してきました。

――クセ毛の方をたくさん施術することで、クセ毛カットや縮毛矯正に関する知識・技術に磨きをかけていったのですね。

柳本:はい。クセ毛カットってすごく難しいので最初は結構時間がかかっていましたが、僕のお客様は100%クセ毛の方でしたから、現場で経験を積み重ねながら成長していきました。徐々に自分の技術が洗練されていった感じです。

「美をもって世界を救う」Lilyは、強い個性の集まり

くせ毛に関する圧倒的な技術と知識を持つ「くせ毛・縮毛矯正の匠」と知られる「Lily」柳本剛さんのインタビュー模様

――フリーランス時代の経験を生かして立ち上げたのが、現在柳本さんが代表をされているサロン『Lily』ですよね。立ち上げたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

柳本:フリーランスで自由に楽しく稼げていたから、最初はサロンを立ち上げることなんて全く考えていなかったんです。でも、2つ目のサロンで知り合い、今でも共に働く寺村が「一緒に働きたいね」と誘ってくれまして。そう言ってくれる人がいるのだったら、一緒に働ける場所を作らないとなあと思って始めました。

サロンを立ち上げることに関して、特に不安はありませんでした。元々自分も売り上げがありましたし、さらにそこに仲間が加わるので「どう転んでも大丈夫!」という自信をもっていました。自分を信じてあげられるのは、自分しかいないですからね。

――Lilyの理念・信念を教えてください。

柳本:「美をもって世界を救う」です。例えば、男性って美しく自信に満ちた魅力的な女性に、お金をたくさん使いますよね。美しさが経済効果を生み出し、それが社会の発展につながっていくと思うんです。

そう考えるようになったのは、フリーランス時代にバリの孤児院へカットに行ったことがきっかけですね。「クセ毛の女の子をたくさんカットしよう」と自信満々で行ったのですが、見事に打ちのめされました。クセ毛が手ごわすぎて、そもそも女の子は髪をおろせない。髪を結ぶことしかできないんですよ。結局、男の子しかカットできませんでした。

そんな女の子達がサラサラのストレートヘアになったら、人生が変わるだろうなあと思ったんです。そして自信に満ちた魅力的な女の子達を見たら、周りの男の子達はデートに誘ったりプレゼントを渡したりしたくなる、つまり経済が回りますよね。
でも世界には、女の子がそんなふうにヘアスタイルを変えて可愛く変身できる場所自体がない、という国もたくさんある。だから将来的には、いろいろな国に「女の子が魅力的になれる場所」を作りたいと考えています。

――Lilyは業務委託形式のサロンですよね。集客面は立ち上げ当初から順調だったのですか?

柳本:そうですね。そもそもLilyは立ち上げ当初から、集客やブランディングをちゃんと自分でできる美容師だけが集まっているんです。というのも、Lilyが目指しているのは「強い個を集めてさらに大きなパワーを生み出すこと」なんです。

一人で叶えられることには限界がありますが、強い力や個性を持った人達を集めてそれぞれの専門に特化していけば、もっと大きなことが成し遂げられる。だから、一人ひとりパワーを持っていることが必要不可欠なんです。
まずはそれぞれの分野でしっかり活躍しないことには、「強い個の集まり」にはならないですからね。Lilyに美髪アドバイザーやクセ毛マイスターなどの個性的なメンバーが集まっているのは、そういった理由からです。

――現在、柳本さんがヘアケアやスタイリングで大切にしていることを教えてください。

柳本:あまり作り込みすぎない、という点です。サロンで作り込んだだけのスタイリングは、ご自宅でなかなか再現できないと思うので。特に僕のお客様は30~50代くらいの方がほとんどなのですが、皆さんお忙しいので毎日のセットにじっくり手間や時間をかけていられません。
それから、「スタイリング剤はべたついたり肌が荒れたりするので苦手」という方も多いので、お客様をセットする時にスタイリング剤は一切使いません。洗い流さないトリートメントだけで仕上げます。

僕が現場で大事にしているのは、「再現性」「持続性」「デザイン性」。基本的には、ご自宅でもオイルやトリートメントだけで簡単にサッと仕上げられる「作り込まないナチュラルな美しさ」を実現できるように、さらにその仕上がりが長持ちするように心掛けています。

――Lilyをオープンしてから数多くのお客様を担当されてきたかと思いますが、忘れられないお客様とのエピソードはありますか?

柳本:ちょうど今日ご来店してくださったお客様は、もう2年半くらいのお付き合いになるんですが、初めてご来店された頃は、髪があまりにも傷んでいたのでつむじ周辺の毛をご自身でむしってしまい、そこだけ極端に短い状態でした。さらに、髪がどんどん切れてしまうので一定の長さ以上伸びなかったんです。

でも、最近ようやく髪質が改善されて髪がしっかり伸びてくるようになりました。すると、「これが自分の人生だから背負っていくしかないと思っていたのに。まさかこんな手触りの良い髪になれるなんて!」とすごく感動されていたんです。そこまで喜んでいただけると美容師冥利に尽きるといいますか……。美容師で良かったなあと思える瞬間でした。自分の仕事によって、人の悩みや不快・不満に思っていたことが解消され、さらにその瞬間に立ち会えるというのはすごく幸せなことだなあと感じています。

――お客様と信頼関係を築いていらっしゃるんですね。Lilyのスタッフとの関係性はいかがですか?

柳本:うちほど仲良いサロンはないのではと思うくらい、仲が良いです! しょっちゅうみんなで遊んでいますよ。プライベートでは、本当に仲が良い友達のような感じです。もちろん仕事の場では、プロとしての意見や意思をお互いにしっかり主張します。

僕は仕事をするうえで、スタッフとの会話をとても重視しています。マーケティングや技術、製品開発などさまざまなことについてしょっちゅう話をしていますね。スタッフ全員、努力して結果を残してきた人達なので、自分のこだわりや価値観をきちんと持っているんです。さらに、みんな勉強も続けている。だから、会話をしながらお互いの情報や意見をすり合わせることで、魅力的なアイディアをたくさん生み出せるんです。その過程が、僕はすごく楽しいんです。スタッフと会話を重ねることは、僕の大事な仕事のひとつです。

――スタッフには、日々どんなことを大切にしてほしいですか?

柳本:美容の勉強を続けていくことももちろん必要ですが、まずは、さまざまな人との出会いを大切にしてほしいですね。いろいろな業界の人と話をして、美容以外の知識をどんどん吸収したほうがいい。というのも、僕は美容師一本でずっと食べていくためには相当な覚悟と勉強が必要だと考えています。同業者から見ても「この人はスゴイ」というレベルで尖っていないと、なかなか生き残れない。

だから、美容だけでなく、さまざまな業界のプロになって、「美容師」×「○○」というふうに掛け合わせて、唯一無二の存在になっていくことが必要だと思うんです。例えば、Lilyには美容師YouTuberや、プロボクサーのライセンスを持っている美容師もいます。いろいろな美容師の形があっていいと思います。

――「唯一無二の美容師」を目指すにあたり、日々どのようなことを大切にされていますか?

柳本:スタッフにいろいろな世界を見た方がいい、美容師以外でもプロになったほうがいいという話をしても、なかなか実践できないことではあります。だから、その機会を僕が作るべきだと考えています。

例えば、今手掛けているヘアケアブランド『Flowers』の製品開発など、さまざまな事業にスタッフを巻き込んでいるんです。毎回誰かひとり担当を決めて事業を一緒に進めていき、「美容師以外の収入源を作る」ことを習慣化させています。まずは、「美容師としての仕事以外にも収入があるというのはこんなに素敵なことなんだ」ということを知ってもらうきっかけを作れるように、心掛けています。

――来年には、『Flowers』ブランドにスキンケアラインも新しく加わるのですよね?

柳本:そうなんです。今、本当にいろいろ作っているんです。ゆくゆくはボディケア、ネイル・リップケア、ペットケアなんかも作りたいなと。僕はメイクアップではなく、ベースの美しさを作り上げることが大好きなんです。やりたいことが多すぎて、製品開発が全く追い付かない。ちなみに、最近ちょうどスキンケアのサンプルが上がってきたのですが、93個目のサンプルなんですよ。

――すごい数ですね!

柳本:通常は3~4個サンプルを作ったら製品化するんですけど、Flowersのシャンプーも300個近くサンプルを作りました。僕らは中身で勝負したいので、妥協せず徹底的に作り込んでいます。どれだけ原価が高くても一番良いものを作ると決めているので、原価率は半端なく高いです(笑)。

僕は、どうせ美容師をやるのだったら日本一になりたい、世界一になりたいという気持ちで続けてきたのですが、その情熱が今は製品開発に向かっている感じです。ヘアケア製品においては、「これが日本一のヘアケアだ」と自負できるものができました。だから今度は、日本一のスキンケア製品を作ろうと思っています。国によって髪質や肌質がかなり変わってしまうので「世界一」とはなかなか言えないですが、「アジア一」は目指したいですね。

――製品開発を始められたきっかけは、どのようなことですか?

柳本:シャンプーを作りたいというのは、美容学生の頃から考えていました。スキンケアに関しては最初全く興味がなかったのですが、お客様やスタッフから「ぜひ作ってほしい!」と言ってもらえたことがきっかけです。

ヘアケア業界はマーケティングの観点から見て結構穴があったので、勝算があったんです。ただ、スキンケア業界はピンからキリまで埋まっているので、新たに参入しても勝負にならないのではと思いました。でも、僕なりにスキンケア業界を調べてみたところ、実はスキンケア業界も穴だらけだったんです。原価を限りなく下げていて、本質よりもマーケティングにお金を費やすことで売られている物が多い。そこで、「これは本質で勝負できるな」と感じたので開発を始めました。

でも、スキンケアは肌質によって「合う」「合わない」が出てくるので難しいんです。
女性の肌って体調やホルモンバランス、季節、メンタルなどいろいろな要因で常に変化しています。どんな肌にも合う完璧なスキンケアというものは存在しない。だからといってアイテムの選択肢を増やすと、どれを使えばいいのかわかりにくい。だから、振り切ろうかなと考えています。
全ての人の肌に合うものは作れないですが、合う人にとっては「これ以外のスキンケアは使えない!」となるくらい気に入ってもらえる物を作りたいなと思っています。

失敗を恐れずに『面白いこと』への挑戦を続ける

くせ毛に関する圧倒的な技術と知識を持つ「くせ毛・縮毛矯正の匠」と知られる「Lily」柳本剛さん

――Flowersブランドに加え、2018年の9月にはパーソナルトレーニングスタジオをオープンされましたね。幅広い事業を手掛けていらっしゃいますが、事業の見極めポイントを教えていただけますでしょうか。

柳本:事業の見極めポイントは、「面白いか」「面白くないか」です。ただ、やはりそこにチャンスがあるかどうかはすごく大事なんです。僕の中では、チャンスがあるかないかを面白さの基準としているんです。チャンスがあるということは、そこに疑問や不快・不満という感情、矛盾点が存在するということ。まだ誰も解決していない疑問や矛盾点を「僕だったら解決できるのではないか」と思ったときに、これはチャンスだなと、面白さを感じて取り組み始めるんです。

――毎日お忙しいかと思いますが、仕事とプライベートはどのように分けているのですか?

柳本:全然分けていないですよ。仕事もプライベートの延長線上みたいな感覚ですね。仕事をプライベートからしっかり切り離すと、仕事がつまらなくなってしまう。仕事って人生の大部分を占めているので、どうせなら楽しみたい。今僕は楽しいことを仕事にしているだけなので、仕事に対してストレスを感じることもないんです。「やりたいことだから」で片付いてしまう。そのやり方が、僕に合っているのかなと思います。

ちなみに僕はスノボが大好きなので1~3月はずっと山籠もりしているのですが、この趣味をどうやって仕事につなげようかなとずっと考えています。スノボ・スキー人口はどんどん減少していますが、それ以外の人達をゲレンデに呼びこめるような仕掛けを考えて実現できたら面白いですよね。

――いろいろな事業を手掛けてきたなかで、大変だったことや失敗してしまったことなど、ありますか?

柳本:失敗は数えきれないくらいしています。ただ、失敗することを特に恐れていないといいますか、これは失敗するかなあと思っても、挑戦してみたいという好奇心が勝ってしまうんですよね。結果が見たいんです。

失敗をすると、「ここまでやっちゃダメなんだ」という基準が自分の中で作れる。「ここまでだったら踏み込んでも大丈夫」という境目がわからないことには、精一杯の攻めができないですからね。その境目を見極めるためには、むしろ失敗したほうがいいなと。ビジネスも人間関係も、全てにおいてそんなふうに考えています。

――現在の美容業界に対して、どのように思われますか?

柳本:そもそも僕は、美容業界というくくりでは一切見ていないんです。「業界の常識は世間の非常識」ともよく言われていますし、自分の視野を狭めたくないので業界の枠を超えた視点を持つように意識しています。ただ、ビジネス的な観点から言うと、ほかの業界の良いところを取り入れる姿勢が大事かなとは思いますね。

さまざまな業界に目を向けると、各業界の方々が長年悩んだ末に生まれたもののなかに、さまざまなアイディアやヒントが転がっているので。ほかの業界の良いところはどんどん真似していけば良いと思っています。そのほうが得かなと。

――柳本さんの直近の目標を教えてください。

柳本:直近では、Flowersブランドの展開がいろいろと控えているので開発やマーケティング・ブランディング、そういった諸々を頑張りたいですね。現在は日本国内だけですが、今後Flowersはアジアへの海外展開も目指しているんです。せっかく良い商品を作ったとしても、大勢の人に使ってもらわないと意味がない。だから、Flowersを知ってもらえる機会や場所をどんどん作って、ブランドを確立させていきたいと考えています。

ただ、Flowersの実店舗を構えると固定費が掛かりますし、新鮮味が徐々になくなってしまう。だから、消費者を飽きさせない・忘れられないためのひとつの方法として、百貨店などの催事に出店してみるのも面白いかなと思っています。イベントを各地で仕掛ける感覚ですよね。

ちなみに、Flowersのシャンプーやトリートメントは、好みの香りを混ぜて使うことができるんです。2018年の12月に期間限定の香りを発売したところ予約開始19分で完売しました。だから今後は限定品を年に数回出そうかなと考えています。香りのラインアップもこれからさらに増やしていく予定です。つまり、Flowersブランド自体が消費者を飽きさせない要素をもっているんです。ブランド自体も売り出し方も、常に新鮮味を保っていきたいですね。海外進出の際には、実店舗ありきで考えた方がいいのかもしれないですけどね。

――長期的な展望はいかがでしょうか。

柳本:常に変化していくと思うので、最終的にどんなことをしているかはまだわからないですね。ただ、Lilyの理念である『美をもって世界を救う』を実現するために、海外に縮毛矯正専門店を作りたいなあと考えています。縮毛矯正は僕らが得意としている分野ですし、アジアはSNSが活発な国が多いのでSNSを活用したマーケティングを行っていけば勝算があるかなと思っています。

それにあたって、実は今縮毛矯正の薬や処理剤なども開発中なんです。やはり、自分達できちんと作り込んだ薬剤を持っていきたいですからね。あとは、現地の方を雇用して育成にも力を入れたいです。雇用機会を創出することにもなりますし、現地スタッフが縮毛矯正専門店で働くことで裕福になり、お金をたくさん使えるようになれば経済活性化につながりますしね。

圧倒的な技術を誇る専門店を作り出すために、今徐々に動き出しています。まずはちょっとでも始めてみないと話は進まない。フットワークはできるだけ軽く、まずは行動してみることを常々意識しています。

――本日は、素敵なお話をありがとうございました。

※このインタビュー記事は2018年12月の取材に基づいています。
※記載内容はインタビュー当時のものとなりますのでご了承ください。


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